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執筆者の写真オペレーター 岡部

「ジェフリー・バワのホテル」という芸術

更新日:6 日前

ベントータにある「ルヌガンガ Lunuganga」














ジェフリー・バワ(Geoffrey Bawa)はスリランカを代表する建築家で、リゾートホテルや学校、富裕層の個人宅、国会議事堂など様々な建築を手掛けた偉大なデザイナーです。

スリランカ国内だけではなく、インドなどの海外からも依頼があり多くの意匠を残しています。

バワのホテル目当てにスリランカを訪れるツーリストも珍しくなく、多くが大手のホテルグループやバワの遺産を管理する財団の管理下にあり経営&保全されています。


バワが亡くなられたのは2003年なので、案外時代の新しい人なのかと意外に思った事がありました。

ジェフリー・バワという人は、英国植民地時代の残り香のある人物というか、スリランカスタイルで正装したサーヴァントが仕え、英国のローレンス・オリヴィエやヴィヴィアン・リーといった大スターをもてなしたといった優雅なエピソードが頭に浮かぶ、出自も現在のいわゆるマジョリティであるシンハラ仏教徒とはまるで異なる人というイメージがあり、

モノクロ写真の中の古き良き時代の知識階級のイメージが私の中で出来上がっていました。

建築年表を見ると、彼のホテルの中でも今も大変人気のあるHeritance Kandalamaや

Blue Water Hotel、Jetwing Lighthouseなどは1990年代、いわば晩年近くに造られているので、芸術活動期間の長い凄い人だったんだなとあらためて思います。



彼のホテル建造の際のエピソードは芸術的希求によるものが殆どで、スリランカで跋扈している様々なしがらみによる無数の妥協とは一線を画しており、それがかえって新鮮で魅力的に映ります。

スリランカ国内のエコ・ツーリズム団体を主宰している方が自然に優しいホテルについての講義の際に、スリランカでもっとも有名なエコ・ホテルの一つと言って良いダンブッラのヘリタンス・カンダラマの事を例に挙げ、「あのホテルがエコとか、ちゃんちゃらおかしくて〇〇が出る」とおっしゃった。

ヘリタンス・カンダラマ(旧:カンダラマホテル)は依頼主のAITKEN SPENCEがヘリを用意し「スリランカのどこでも良いのであなたの気に入った場所にホテルを建ててください」とバワに話したと。で、ダンブッラ付近のあの湖の近くに決まったのですが、建設が理由で水質などの環境問題が度重なり地元住民との裁判となってしまい、初っ端はまるでエコではなかったと。

バワはクレームがあっても建造プランは変えなかったようで、結果的に現在のあの自然と一体化したような意匠が出来上がったわけです。

ベントータにある彼の私邸のルヌガンガ(Lunuganga *塩の河という意)は庭の設計の際に少しでも外部の余計なものが一切視界に入らないように注力したとのことで、多くの人なら気にせず通り過ぎてしまうような事でも彼の美意識には大問題だったよう。

この辺の性格、イタリアの映画監督ヴィスコンティにも似ていなくもない。

自然や人に奉仕するのではなく、自然が芸術に仕える、とでも言うか。


建設中に依頼主など周囲と意見の相違があったりすると途中で仕事を放り出してしまう事がしばしあった事でも知られています。

依頼主からすると大きなお金をかけて作っている屋敷が途中で投げ出されるとか悲劇としか言いようがありませんが、設計面、感情面でどんな事がバワとトラブルになったのか詳しく読んでみたいところ。




スリランカで観光の仕事の隅っこに携わっている私から見ても、バワのホテルとそのエピソードから来る魅力は世界遺産に匹敵するといって差し支えないと言い切れます。

LTTEとの内戦がまだ行われていた時代、海外の観光客からはスリランカに行くのはちょっと怖いと思われていた頃にも、コアな旅行者は「バワのホテルに泊まりたい」とカンダラマやベントータ、ゴールを目指していました。

その中には日本からのお客様も数多くいて、日本人のバワ好きを強く印象付けました。

細やかな部分に異常にこだわる気質が日本人の琴線に触れるのかも....しれませ

ん。


次の記事では、そんなバワへの偏愛から遠い、当のスリランカ人からのバワ評に触れてみたいと思います。


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*10月7日追記:「バワの同性愛について、スリランカ人は?」というテーマを何年も前から書いてみたいと思っているのですがまだなかなか頭の中でまとめきれていません。

いつかまとめてみたいと思います。。






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